たき火~詩・ひとりごと

アウトプットのためのアウトプットです

土の匂い

遠い記憶の片隅に

置き忘れてしまったものがある気がする

それは私にとってなにか決定的なもので
かつて私の一部だったような気がするなにか

雨の日にわき立つ土の匂いに
脳を刺す電車の発車ベルに
踊るような少女のステップに
そいつの影を見た気がしてハッとするのだが思い出せない

決して忘れてはいけなかったはずのなにか

けれども私はこうして生きていて
問題といえばたまに泣きたくなるくらいのもので
無性に泣きたくなるくらいのもので
そういうものだと思って生きています

 

モグラ

想いは空に吸い込まれ

足はぬかるみに沈んでゆき

もがくほどに沈んでゆき

煙ばかりが吐き出されるのです

 

両の手で掻き集めた宝物は

こぼれ落ちこぼれ落ち

網の目の粗さを嘆くばかり

 

陽に目をしかめ月に涙し

雨に打たれてぼんやりと

 

そして今日もモグラは穴倉に帰ってゆき

煙ばかりが吐き出されるのです

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月が降りかかる夜に
草木は光を浴びて躍動し
命を吹き込まれたぼくの影は踊り出した
湿気を含んだ夜気は密度を増してざわつき
自制を失った犬たちは空に向かって吠えたてる
 
舞台は第2部
真夜中の狂想曲
鑑賞者は一人
後ろから2列目の真ん中、特等席
 
月が降りかかる夜に
前触れもなく上演される
 
 
 
 
 
 
 
 

生きる

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生きる理由がほしいなら
自分で作らなくちゃいけないよ
みんな必死で探し出して
後生大事に抱えてる
 
あの人の笑った顔が見たいなら
自分で笑わせなくちゃいけないよ
じゃなきゃあの人は離れてゆき
手には余韻しか残らない
 
目に映るものすべてが下らなく思えたら
全力で飛び込んでいかなくちゃいけないよ
頭でなく感情で理解すれば
見える景色もあるだろう
 
あの人が別のだれかと笑っていたら
ぼくも笑っていなくちゃいけないよ
だれかを独占したいという気持ちが
傲慢以外の何かであるはずもなく
 
 

 

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細分化された世界で
与えられた歯車を回し続けているよ
 
隣のレーンに入ってはいけない
そこはおまえの持ち場じゃないから
 
悪魔の囁きが
絶えずおまえを唆すだろう
 
振り返ってはいけない
見回してもいけない
 
周りはみんな幻で
たぶんおまえも幻だから
 
その道を進んでいくんだ
ただひたすらに真っ直ぐ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

仮構の城

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意味のないものに意味を見出し
価値のないものに価値をつけ
根拠のない自信を拠り所にして
二本足でかろうじて立っている人たち
 
理性と引き換えに不安を手に入れ
止む事のない罪の意識に苛まれ 
ありもしない理由を求めつづけ
自分を納得させて次へと進んでいく
 
そうして築き上げた仮構の城にも
徐々に浸み出してくるよ
塀の隙間からねっとりとした黒いものが
 
決してそれと目を合わせてはいけない
意識をそらし続け
仮構の城で生きる人たちへ